彼女はほんとうにたくさんのうそをわたしについたし
うそをついてもそれがほんとかうそかもよくわかってない
でも彼女には昔「君は心を開いてくれない」とかいってくれるような男がいた
どうせ寝ても居た
彼女が正直なのはどこでだったか忘れた
でもその正直のあらわれる場所も嘘で覆い隠そうとした
それほどうしろめたいおもいをたくさん抱えていたのだとはわかった


わたしはずっと一人でじぶんであるいてきた 
それに比べればとても贅沢だと思う 
わたしはいつもうらやましかった
そういうひとたちにうらやましがられたり妬まれたり「あんたはどうせ幸せになる」などといわれるとき
おまえたちはどうせ十五歳より上になってからほんとうの意味で孤独を引き受けたことなんかついぞないくせにと思った
じぶんの苦しみを紛らわして中毒患者のようになっている人を
哀れむほどの余裕はなかった

じっさい彼らは魅力をふりまいているし自分にみょうな自信をもっていて
みすぼらしい服しかもっていないわたしは自分がひどくまぬけな生き物であるように感じて
彼らはわたしがまぬけであることをよろこんだ


うるさいひとがいる
寂しい夜は声をかけてきた男と寝たり遊んだりするのだという
孤独の苦しみから逃れるために自分を律するプライドすらなくすことに
この人は何もかんじないのだろうかと疑問に思った
はたしてたしかにかんじない人間もいるのだということも最近はわかるようになった