彼女に電話をしてしまった。
実家に帰っていて、前日から化粧も落とさず何時間も眠りつづけ、
目が覚めても死にたいような気持ちがおさまらずに夜中に泣いて家人を起こすようなことをしてしまった。
昼に衝動的にワンコールだけしてしまって慌てて切った。着信拒否されていないことに驚いた。
そのあとすぐに電話が来た。

彼女は大好きだと言った。会いたいといった。
十三分電話して、その途中で電波が悪くなって切れた。それからぐっすり眠った。
目が覚めたら、悲しくてたまらなかった。
自分がこれから一切幸せになれる気がしなくて、つらかった。

彼女のすることは信じられないくらい残酷だと思う。
彼女は男と結婚する。そのうえ私とどうなろうというのだろう。
着信拒否をされていたら、私はたぶんうれしかったと思う。
ロダンの愛人だった女彫刻家のことを思い出した。
自分の人生を人のせいにするから気が狂うのだ。

それはわかるけれど、じゃあこんなに悲しいことをされて、それでも執着がぬぐえなくて
相手は二股して結婚して幸せになるんだとして、私は男の人と恋をしたことがなくて、
そういうもろもろの事実を、どうやって消化したらいいのかわからないでいる。