人魚

タカノ綾の展示を見てきた。
女の子のからだがすごくエッチで、わたしはどうして女に生まれたんだろうと思った。
流動体のからだ、流動体の心でできている生き物だと思う。
女性の主成分が海なら、わたしのそれは乾上がってしまえばいいのに、からだのなかで揺れているのがわかって、それが悲しんだり怒ったりしている。
からだが枯れたら、空気になって浮かんで、かろやかに誰とでも心を溶け合わせることができる気がする。死んだら、何もないのかもしれないけど。

わたしは彼女に欲情したり、憧れて胸がくるしかったりしたけれど、それは怖くてつらかった。
たとえば、その時その瞬間のことしか考えないひとや、さんざんひとと付き合ったあとなら、性別なんか関係ないといえるのかもしれない。
わたしがなにしたって届かない気がしていた。彼女は男みたいに考えるけれど女のにおいがした。わたしなんかより自分が女だとよくしっていた。だから男といた方がいいんだと思った。

女のわたしが死なないかといつも思っていた。彼女が憎らしかった。好きだからかなしかった。わたしは男のひとと寝たことなんかなかった。

女の子がわたしをきれいというのは、わたしが女のなりそこないだからじゃないかとよく思う。
女の子は誰もがみんなそれぞれ美しくてわたしは泣いている。彼女たちは男とセックスしながら、わたしのことを愛していると思っている。たぶんちがうよ。わたしが彼女たちの美しさに心酔しているから、錯覚しているだけだと思う。

好きでもない男とはじめてセックスしたら、その直後からすごくきれいになったといろんなひとに言われた。

そんなわたしを女の子たちは変わらずに愛してくれるのだろうか?

女の人は男のひとにバカねと言うのが好きで、わたしは自分の耳を潰して死んでしまいたくなる。